2011年02月21日

【京大農場】買取り差止めを求め住民監査請求

本日午前10時過ぎ、京大農場買取り差止めを求める住民監査請求を、高槻市監査委員に対して行いました。

以下がその請求書です。議員インターン生の大学生たちががんばって作ってくれました。

高槻市職員措置請求書

1.事実の概要

(1)奥本市長の公約

平成15年4月の高槻市長選挙で、市長・奥本務(以下「奥本」という。)は、高槻市所在の京都大学の農場(以下「本件農場」という。)に、サッカースタジアムを建設し、ガンバ大阪を誘致するという公約(以下「本件公約」という。)を大々的に掲げた。奥本は、当選後、平成15年度から17年度の施政方針大綱等においても、本件公約を表明した。

(2)本件公約に対する否定的見解

本件公約の実現性については、上記選挙時に、江村前市長が、スタジアム建設予定地である本件農場には遺跡が埋まっており、不可能であると指摘していた。

また、同年10月15日の大阪府議会・教育文化常任委員会で、大阪府は、本件農場におけるスタジアム建設について、史跡の保存に影響を与えることになり、また史跡本来の活用とは考えがたいことから、建設は難しいとの見解を示した。

にもかかわらず、同年11月に、市は、都市型公園整備構想検討委員会を設置し、平成17年7月には、都市型公園整備構想中間報告書を公表して、ガンバ大阪を誘致した場合、都市イメージの向上等で、約195億円の経済効果があると謳った。

(3)本件公約の破綻

@ 本件農場内の遺跡の分布範囲

市は、平成20年度からの3年間で、本件農場内において、西側6ヶ所、東側6ヶ所の計12ヶ所で地中レーダー探索とボーリング調査による発掘調査を実施した。平成20年度及び21年度の調査では、主に弥生時代前期〜中期の居住域や墓域を確認し、安満遺跡が拠点的な集落であることを改めて確認した。

平成22年度には、発掘調査並びに土壌分析が進められ、その結果、居住地が立地する中央の微高地の縁辺部に水田が広がり、西側には低湿地、東側には墓域との間に低地が発見された。市は、当該範囲約6.3haを、史跡指定すべき範囲として文化庁へ申請した(しかし水田跡については文化庁へ申請した範囲外にも分布している)。

A ガンバ大阪のスタジアム建設計画

ガンバ大阪が計画しているサッカースタジアムは、縦約210m×横約190mのほぼ長方形のもので、国際試合も開催できるFIFA基準を満たした32000人を収容できるものである(これは現在ガンバ大阪がホームスタジアムとして使用している万博記念競技場を上回る規模である)。

B 公約の破綻

史跡指定を受ける部分にスタジアムを建設することはできないのであるが、史跡指定を受けない部分においても、ガンバ大阪が計画するスタジアムの形状・面積から、建設不可能であることが明らかとなった(別添図参照)。仮に、史跡指定を受けない範囲に当該スタジアムが収まるとしても、建設時に貴重な遺跡等が出土する可能性が高く、その場合には、スタジアム建設が不可能となる虞が強い。

以上の点から本件公約の実現は不可能といえる。

(4)大枠合意書の締結及びその経緯

奥本は、本件農場内の遺跡の範囲もまったく検討・調査していない段階で、つまり何の確証もない状況で、故意に、平成15年の市長選挙時に、本件公約を打ち出した。その動機は、単なる集票目的としか考えられない。市が、今日まで、ガンバ大阪に対し、誘致の協議を行ってこなかったことが昨年明かされたが、このことは、市がガンバ大阪を誘致しようとしなかった、すなわち公約を実現しようとしなかった証左である。このことからも、本件公約が、単なる集票目的のための虚偽であったことが明らかである。

(3)からも、奥本が、本件農場の遺跡の範囲や、スタジアムに関するガンバ大阪の意向・計画を考慮することなく、本件公約を表明したことは明白である。
にもかかわらず、市は、平成21年9月28日に、「京都大学大学院農学研究科付属農場の移転に係る覚書」(以下「大枠合意書」という。)を、京都大学及び都市再生機構(UR)との三者間で締結した。

大枠合意書の概要は、本件農場の史跡指定がされる範囲は、市が京都大学から直接買取り、本件農場のその余の範囲は、URが京都大学からいったん買取って施設を建設した後、当該土地及び施設を市が買取るというものである。

大枠合意書締結の原因が、本件公約にあることは、上記各年度の施政方針大綱や都市型公園整備構想中間報告書等から明らかである。

なお、市は、平成22年12月の議会で、大枠合意書について、破棄できないと答弁している。

(5)小括

以上のとおり、大枠合意書に基づけば、市は、近い将来、京都大学からは本件農場の一部を、URからは何らかの施設と本件農場のその余の部分を、それぞれ買い取らなければならないことになる。金額は、近傍類似の土地の売買実績等から、土地代だけで約150億円、施設も含めると総額数百億円と見込まれる。

奥本が公約したスタジアム建設・ガンバ大阪誘致という当初の目的の達成が不可能であると判明したのであるから、本件農場を買い取る必要性はまったくない。また、本件農場の買取りによって、京都大学が高槻市から去ることになるが、これは、関西大学新キャンパスに約41億円も補助をした際の市の論理(大学は「知の拠点」であり経済効果を生んでいる等)に基づけば、市にとって大きな損失となるはずである。

したがって、京大農場の買い取りはまったく無意味である。そればかりか、大枠合意書に基づき、京大農場の買取りに公金の支出をすることは、以下のとおり、違法不当である。

  
2.違法性

(1)地方自治法96条違反等

市は、議会の議決を経ることなく、京都大学及びURとの三者間で、大枠合意書を締結した。

この行為は、地方自治法96条1項8号規定の「財産を交換」に該当する。

同条の条件については、高槻市の「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」3条に定められている。同条は、「1件5000平方メートル以上の不動産の買入れ」については、議会の議決に付さなければならない旨規定している。

本件農場は約15haあり、同条が定める範囲を超えているから、議会での議決を要したが、市は、議会の承認を得ず、大枠合意を結んだ(しかも、議会での承認が必要なのに、勝手にこれを破棄できないと、議会で堂々と答弁している)。この行為は、上記市長に与えられた法令上の裁量を逸脱しており、違法である。よって、当該契約は、無効である。

(2)背任

奥本は、本件公約を大々的に掲げたが、そもそも本件公約は、何らの根拠・裏付けのないものであって、極めて無責任なものであった。

市は、スタジアム建設・ガンバ大阪誘致が実現されれば、多大な経済効果が生まれるとも公表したが、上記のとおり、本件公約は当初から実現性が疑問視され、大阪府も否定的な見解を示していたし、ついには昨年、実現不可能であることが明らかとなった。

そうすると、本件農場の買取りは、当初の目的を達成できないから、不要なものであり、これを今後行う合理的理由は見当たらない。

しかし、現状、本件農場買取りの目的たる本件公約が実現できないのに、市の農場買取りが含まれる大枠合意書が結ばれているから、近い将来、本件農場買取りのために、多額の税金が無駄に支出され、市に財産的損害が発生することは明白である。

奥本が、最大の目玉公約であった本件公約の破たんを認めれば、市長辞任等を求める責任追及の声が議会や市民から上がる可能性が高い。これを回避するため、すなわち自己保身のために、奥本は、公約の破綻を認めず、大枠合意書を締結して、いかにも公約が進展しているように見せかけた。大枠合意書には有償での本件農場譲渡が盛り込まれているから、奥本には、市の財政を犠牲にしようという認識・市に損害を与える目的があるとしか考えられない。

したがって、奥本の行為は、刑法247条の背任罪の構成要件に該当するから、その罪責を負うべきである。

(3)地方財政法4条違反

奥本が大々的に掲げた本件公約では、本件農場を、スタジアム建設・ガンバ大阪誘致のために利用するとしていた。しかし、この目的が達成できないことは、上記のとおり明らかである。

地方財政法4条1項は、「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最小の限度をこえて、これを支出してはならない。」と規定している。本件農場の買取りは、その目的たる本件公約を達成することができないのであるから、同条に反し、違法である。

(4)公序良俗違反

奥本は、平成15年度の市長選挙の際にスタジアム建設・ガンバ大阪誘致を大々的に掲げ、その後、平成15から17年度までの施政方針演説等で、何度もこれを明言した。

しかし、上記のとおり、本件公約には、選挙時何の根拠・裏付けもなく、今般実現不可能であることも明らかとなった。また、本件公約の実現性や根拠について、議会で質問されたにもかかわらず、はぐらかしの答弁に終始し、説明責任を一切果たしていない。

本件公約の表明は、これが実現されるものと信じて投票した高槻市民を裏切る詐欺性の高い行為であり、公正であるべき選挙で自らが当選せんがためにした不当性の高いもので、市政に重大な責任を有している者の行いとしては到底許し難い反社会的なものである。当該行為は、市長としての自覚を著しく欠くもので、それによって市民に政治・行政に対する不信感を抱かせ、同時に対外的にも高槻市政への信用を失墜させるから、公の秩序等を乱す行為である。

したがって、当該行為は、民法90条に該当し、違法である。


3.監査の請求

上記のとおり、本件農場買取りは違法不当であり、それによって市の財政が多額の損害を被ることは明らかである。

よって請求人は、地方自治法第242条第1項に基づき、市が、京大農場の土地又は都市再生機構の建設した施設を買取るための公金支出を差止めることを勧告することを求める。また、万が一、上記違法な公金支出が行われた場合には、関係団体、関係人、関係職員、決裁権者、専決権者、その他の責任者及び市長らそれぞれに対し、不当利得返還請又は損害賠償請求することを勧告することを求める。

4.請求者

別紙記載のとおり。

 
地方自治法第242条1項規定により別紙事実証明書を添え必要な措置を請求します。

平成23年2月21日
高槻市監査委員 殿




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posted by 北岡隆浩 at 22:32| 大阪 | Comment(0) | TrackBack(0) | 高槻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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