2011年05月19日

【京大農場訴訟】住民訴訟を提起

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昨日、京大農場の買取りの差止めを求めて、住民訴訟を大阪地裁に提訴しました。事件番号は平成23年(行ウ)第95号となりました。

4月20日付で住民監査の結果が出たのですが、棄却。奥本前市長が根拠もなくサッカースタジアムを建設すると公約したことにも違法性があるのではないかと訴えたのですが、その点を監査委員は無視しました。まあいつものことです。

市長選挙がありましたので、市政の変化を期待し様子を見たかったのですが、法律上、住民訴訟を起こせるのは、監査結果が出てから30日以内という規定があるため、この度提訴に踏み切りました。この機会を逃すと裁判で争えなくなる可能性もあったからです。

新しい市長が、無意味な京大農場の購入を断念してくれれば一番いいのですが・・・

以下は訴状です。

訴状

平成23年5月18日
大阪地方裁判所 御中


請求の趣旨

1 被告は、高槻市八丁畷町の京都大学大学院農学研究科付属農場あるいはその跡地並びに当該地に建設される建造物の全部又は一部の取得に関して、公金を支出し、契約を締結もしくは履行し、債務その他の義務を負担し、又は地方起債手続をとってはならない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。


請求の原因

第1 当事者等

1 原告らは、高槻市の住民である。
2 被告は、高槻市の市長であり、市の執行機関である。
3 奥本務(以下「奥本」という。)は、平成11年5月から平成23年4月30日まで高槻市長の職にあった。平成23年5月1日以降は濱田剛史(以下「濱田」という。)が同市長の職にあるが、濱田は奥本の後継者として同年4月の同市長選挙に立候補し当選した。

第2 事実経過

1 大枠合意書締結に至る経緯

(1) 平成15年の公約及びその後の施政方針大綱等

奥本は、教育委員会管理部長、市民活動部長、市民福祉部長、市長公室長、助役(3期)及び市長(1期)を歴任した後の平成15年4月の高槻市長選挙において、高槻市八丁畷町にある京都大学大学院農学研究科付属農場(以下「本件農場」という。)に、サッカースタジアムを建設し、ガンバ大阪を誘致するという公約(以下「本件公約」という。)を大々的に掲げた(甲1)。
しかし、本件公約については、本件農場に遺跡が埋まっていることから、同選挙時から実現性を疑う声が上がっていた。
同選挙で当選後、奥本は、平成15年度から17年度の施政方針大綱においても、本件公約を表明した。
平成15年度では、「市民のオアシスとして、人が集い、語らう場となる、全面芝生の都市型公園の構想を公約に掲げてまいりました。この公園にサッカースタジアムを備え、『ガンバ大阪』の本拠地を高槻に誘致することにより、市内外の多くの人々が集まり、夢を共有しながら、一体となって『感動のできる場』となります。」としている(甲2の2頁7乃至10行目)。
ところが、同年10月15日の大阪府議会・教育文化常任委員会で、大阪府は、本件農場におけるスタジアム建設について、「史跡の保存に影響を与えることになり、また史跡本来の活用とは考えがたいことから、建設は難しい」との見解を示した。
にもかかわらず、平成16年度の施政方針大綱でも、奥本は、「都市型公園の整備を契機として『サッカーのまち 高槻』に『ガンバ大阪』の誘致に向け、スポーツが生活の一部となる‘スポーツ文化’の醸成へと引き続き調査研究してまいります。」とし(甲3の2頁5乃至7行目)、平成17年度も「本市は、全国的にも『サッカーのまち 高槻』として、その名を馳せているところです。『ガンバ大阪』の誘致を含む都市型公園構想につきましては、にぎわいの創出やうるおいのあるスポーツ文化の醸成に向けて、京都大学をはじめ幅広く関係者に働きかけてまいります。ガンバ大阪につきましては、“高槻後援会”や“われら「ガンバ大阪」応援隊”など、ホームタウンとしての市民活動を応援してまいります。」と、ヒートアップしていった(甲4の5頁下から13乃至10行目)。
被告は、同年7月、「都市型公園整備構想中間報告書」(甲5)を公表し、スタジアムを建設し、ガンバ大阪を誘致した場合、都市イメージの向上等で、計約195億円の経済効果があると試算した(甲5の9頁)。
また、平成18年3月には「都市型公園整備構想の基本的な方針」(甲6)を公表し、公園構想等の概要を「市民のオアシスとして、人々が集い、語らう場となる、全面芝生公園にし、そこにサッカースタジアムを備え、『ガンバ大阪』の本拠地を高槻に誘致するもの」とし(甲6の2頁)、「この公園構想等は、都市イメージの向上、経済波及効果、都市基盤の整備、全国への高槻ブランドの発信などが期待され、本市にとってもまた市民にとっても非常に大きな資産となり、市民文化活動に与える効果もきわめて大きいものとなる。」と謳った(甲6の6頁)。

(2) 当時の京都大学の反応等

被告は、平成18年8月に、京都大学に対して上記構想につき説明したが、京大側は「農場移転について学内では議題にもなっていない」として、譲渡などの合意は得られなかったという(甲7)。
このように、被告は、京大に対し市外への転出を求める一方、関西大学の進出については、同大学の学生・教職員らが年間約22億円の経済効果を生み、同大学のグラウンドは災害時に避難場所として活用できるなどとして、総額40億5600万円の支援を行った(甲8)。京大についても同種の経済効果・防災対応が多少なりとも見込めるはずであり、また上記のとおり本件公約の実現性が大阪府等から疑問視されているのだから、被告の方針は理解に苦しむ。

(3) 本件覚書の締結

京大、被告及び独立法人都市再生機構(以下「UR」という。)の3者は、「京都大学大学院農学研究科附属農場の移転等に係る覚書」(以下「本件覚書」という。なお被告はこれを「大枠合意書」と呼んでいる。)を締結した(甲9)。
本件覚書の概要は、京大がUR所有の京都府木津川市の土地に本件農場を移転させ、被告が本件農場跡地のうち史跡部分を京大から取得し、本件農場のその余の部分をURが取得して防災公園を整備した後これを被告が取得するというものである。なお、譲渡金額に関しては、土地について鑑定評価額を基準とし、防災公園については別に定めるとされている。
本件覚書に具体的な金額は記載されていないが、本件農場に隣接する土地を被告は1平米あたり約11万円で取得している(甲10)。京大農場は約15ヘクタール=150000平米あり、土地代だけで約165億円程度が必要と考えられる。

(4) 小括

つまり、本件覚書の締結は、明らかにサッカースタジアム建設・ガンバ大阪誘致という奥本の本件公約に端を発するものであり、上記京大の反応からすれば、本件公約がなければ、本件覚書を締結することはなかったといえる。

2 本件公約の綻び

(1) 根拠の無かった本件公約
被告は、平成20年度からの3か年、本件農場内において地中レーダー探索とボーリング調査による発掘調査を実施した。その結果、弥生時代の集落遺構の分布する範囲が判明し、平成22年8月26日にこの部分を史跡指定すべきであるとの意見具申を文化庁に対し行った(甲12)。
平成22年11月10日の高槻市議会・史跡整備特別委員会が開かれ、被告から同委員会所属議員に対し、上記につき説明がされた。原告北岡が本件公約について質問したところ、被告は、「サッカースタジアムということでございますが、現時点では史跡の追加指定の範囲が明確になっておりませんので、上面利用の具体的な検討はこれからでございます。基本的には、まず、市民の将来にわたっての財産として確保していきたいというふうに考えております。」と答弁した(甲11の6頁左段下から10乃至6行目)。また、ガンバ大阪とは何らの協議も行っていなかったことも明らかにした(甲11の7頁)。
奥本自身は、原告北岡の質問に対し「公約がどうやったかと、過去にさかのぼって言われても、そういうことは往々にしてある」と無責任な答弁をした。
すなわち、本件農場に、どれだけ遺跡が埋まっているのか、サッカースタジアムが建設可能なのか、まったく確認・検証せず、奥本は本件公約を掲げ、施政方針大綱でも表明していたのである。にもかかわらず、本件農場は取得したいと、本件覚書を締結してしまったのである。

(2) 建設できないスタジアム

国の文化審議会は、平成22年11月19日、上記被告の意見具申に基づき、本件農場約15ヘクタールのうち、6.3ヘクタールを国史跡に指定するよう文部科学大臣に答申した(甲13)。その具体的な範囲は甲14のとおりである。
仮に、サッカースタジアムを建設しようとすると、本件農場のうち、史跡指定された範囲以外の部分に建てなければならない。
原告北岡がガンバ大阪に計画しているスタジアムの大きさを尋ねたところ、縦約210メートル、横約190メートルのほぼ長方形型であるとのことであった。そこでこれを甲14の本件農場の図に当てはめてみたところ、どのような角度にしても、史跡の範囲に重なってしまうことが分かった。つまり、現在ガンバ大阪が計画するスタジアムは、本件農場においては建設不可能なのである(甲15、甲17別添図)。
仮に、史跡指定を受けていない範囲に当該スタジアムが収まるとしても、建設時に貴重な遺跡等が出土する可能性が高く、その場合には、スタジアム建設が不可能となる虞がある。

(3) 小括

できもしないこと、不確かなことを公約に掲げることは、もしかするとよくあることなのかもしれないが、公約の破綻を認めず、巨額の税金を支出して広大な土地を、意味もないのに取得しようというのは、常軌を逸している。

3 防災公園としても不必要

被告は、本件農場のうち、史跡指定されない範囲について、その取得及び整備にあたり、国土交通省から補助金を得るために、「防災公園街区整備事業」を活用し、防災公園とする方針であるとしている。
しかし、本件農場を防災公園とするということを、被告は、本件公約が掲げられてから数年間、まったく言っていなかった(甲1乃至7)。また、本件農場の近くには、他の防災公園や、被告が補助をした関西大学の新キャンパスもある(甲8)。
平成23年3月9日の高槻市議会・総務消防委員会で、原告北岡が、「史跡指定されない範囲に関しては防災公園を整備するということなんですが、高槻市にはどれだけの防災公園が必要なんでしょうか。高槻市トータルでどの程度、防災公園が必要なのかについて、何か計画はあるんでしょうか、お答えください。」と質したところ、被告は「防災公園の市全体の計画というところでございます。防災公園の配置等につきましては、市全体としての考え方の整理は今後必要であるというふうに認識してございます。したがいまして、関係部局と協議調整を行ってまいりたいというふうに考えてございます」と答弁した(甲16の16頁中ほど)。
すなわち、本件農場を防災公園とする必要性を、被告は検討すらしていないのである。
本件農場を防災公園とする必要性がないことは明らかである。

第3 違法性

1 地方自治法96条違反等

「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」(甲21)3条は、「地方自治法第96条第1項第8号の規定により議会の議決に付さなければならない財産の取得又は処分は、予定価格20,000,000円以上の不動産・・・の買入れ・・・(土地については、1件5,000平方メートル以上のものに係るものに限る。)・・・」と規定するところ、本件農場は約15ヘクタール=約15万平方メートルあり、第2の1⑶のとおり、近傍類似の土地の売買実績から、土地代だけで約165億円程度、URが建設する施設も含めるとさらにそれ以上になることが見込まれるから、明らかに、議会の議決に付すべき「財産の取得」に当たる。
しかし、被告は、議会の承認を得ず、本件覚書を締結した。しかも、議会での承認が必要であったにもかかわらず、「一方的に破棄できない」とまで議会で堂々と答弁した(甲15の178頁左段下から18乃至17行目)。
本件覚書締結は、上記市長に与えられた法令上の裁量を逸脱しており、違法である。

2 背任

奥本は、本件公約を大々的に掲げたが、そもそも本件公約は、何らの根拠・裏付けのないものであって、極めて無責任なものであった。
被告は、スタジアム建設・ガンバ大阪誘致が実現されれば、多大な経済効果が生まれるとも公表したが、上記のとおり、本件公約は当初から実現性が疑問視され、大阪府も否定的な見解を示していたし、ついには昨年、実現不可能であることが明らかとなった。
そうすると、本件農場の買取りは、当初の目的を達成できないから、不要なものであり、これを今後行う合理的理由は見当たらない。また、本件農場を取得し防災公園とする必要性もない。
しかし、本件覚書が締結されているので、近い将来、本件農場取得のために、多額の税金が無駄に支出され、市に財産的損害が発生することは明白である。
被告が、奥本の最大の目玉公約であった本件公約の非実現性・破たんを認めれば、市長辞任等を求める責任追及の声が議会や市民から上がる可能性が高い。これを回避するため、すなわち自己保身のために、被告は、本件公約の非実現性・破綻を認めず、本件覚書を締結して、いかにも本件公約が進展しているように見せかけた。さらには不必要な防災公園に目的をすり替えようとしている。本件覚書には有償での本件農場譲渡が盛り込まれているから、被告には、市の財政を犠牲にしようという認識・市に損害を与える目的があるとしか考えられない。
したがって、被告の行為は、刑法247条の背任罪の構成要件に該当するから、違法である。

3 地方財政法4条違反

奥本が大々的に掲げた本件公約では、本件農場を、スタジアム建設・ガンバ大阪誘致のために利用するとしていた。しかし、この目的が達成できないことは、上記のとおり明らかである(防災公園は当初の目的にはなく、また不必要なものである)。
地方財政法4条1項は、「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最小の限度をこえて、これを支出してはならない。」と規定している。本件農場の買取りは、その目的たる本件公約を達成することができないのであるから、同条に反し、違法である。
また、防災を目的とするとしても、第2の3記載のとおり不必要なものであるから、100億円を超えるような支出は、「必要且つ最小の限度をこえて、これを支出してはならない。」との規定に明らかに反し、違法である。

4 公序良俗違反

奥本は、平成15年度の市長選挙の際に本件公約を大々的に掲げ、その後、平成15から17年度までの施政方針演説等で、何度もこれを明言した。
しかし、上記のとおり、本件公約については、選挙時において何の根拠・裏付けもなく、今般実現不可能であることも明らかとなった。また、本件公約の実現性や根拠について、議会で質問されたにもかかわらず、はぐらかしの答弁に終始し、説明責任を一切果たしていない。
本件公約の表明は、これが実現されるものと信じて投票した高槻市民を裏切る詐欺性の高い行為であり、公正であるべき選挙で自らが当選せんがためにした不当性の高いもので、市政に重大な責任を有している者の行いとしては到底許し難い反社会的なものである。当該行為は、市長としての自覚を著しく欠くもので、それによって市民に政治・行政に対する不信感を抱かせ、高槻市政への信用を失墜させるから、公の秩序等を乱す行為である。
したがって、当該行為は、民法90条に該当し、違法である。

第4 結論

以上のとおりの違法行為があるので、原告らは、被告に対し、地方自治法第242条の2第1項1号に基づき、当該行為の差止めを請求する。

第5 監査請求

原告らは、平成23年2月21日に、高槻市監査委員に対し、地方自治法第242条第1項に基づく監査請求を行ったところ(甲17、18,19)、同監査委員は、平成23年4月19日付で、原告らに対し、上記監査請求については理由がないとして棄却する旨の通知(甲20)を行い、原告らはこれを平成23年4月20日以降にそれぞれ受け取った。同監査委員の監査結果は失当であるので、原告らは本件提訴に及んだ次第である。


添付書類

甲第1号証 奥本の平成15年の高槻市長選挙時の公約ビラ
甲第2号証 平成15年度施政方針大綱
甲第3号証 平成16年度施政方針大綱
甲第4号証 平成17年度施政方針大綱
甲第5号証 都市型公園整備構想中間報告書
甲第6号証 都市型公園整備構想の基本的な方針
甲第7号証 平成18年8月22日付朝日新聞記事
甲第8号証 平成20年11月27日付産経新聞記事
甲第9号証 京都大学大学院農学研究科附属農場の移転等に係る覚書
甲第10号証 土地売買契約書
甲第11号証 史跡整備等特別委員会議事録(平成22年11月10日)
甲第12号証 史跡整備等特別委員会(平成22年11月10日)の資料
甲第13号証 平成22年11月20日付朝日新聞記事
甲第14号証 史跡安満遺跡の追加指定について(その2)
甲第15号証 高槻市議会会議録(平成22年12月16日の原告北岡の一般質問部分)
甲第16号証 総務消防委員会記録(平成23年3月9日)
甲第17号証 高槻市職員措置請求書
甲第18号証 陳述記録
甲第19号証 関係職員陳述記録
甲第20号証 住民監査請求の監査結果について(通知)
甲第21号証 議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例
以 上




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posted by 北岡隆浩 at 23:59| 大阪 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 高槻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
巨額な税金を投入しようとしているのだから、本当に必要な事業のかどうかがしっかりと見極められないといけないと思います。
選挙だけの「具」にされたのでは市民に対して失礼です。
Posted by 高槻町S・K at 2011年06月02日 11:35
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