うっかりと見落としていましたが、高槻市のホームページで、2学期制の実施に関する意見募集、いわゆるパブリックコメントが始まりました。
★高槻市学校園2学期制についての意見募集
http://www.city.takatsuki.osaka.jp/sonota/gakkouform.html
これまでの私のブログの2学期制関連の記事を読んでいただいた方にはお分かりいただけると思いますが、高槻市における2学期制の実施には、はっきり言って意味が見出せません。推進委員会やシンポジウムで、2学期制を試行しているモデル校から「2学期制の成果」らしきものとして発表されたものは、2学期制とは無関係のものばかり。流行りの言葉で言えば、2学期制の成果として「偽装」しているわけです。
高槻市教育委員会が推進しようとしている「2学期制」の一番の問題を、私は、
「2学期制の実施という衣に包んで、実は、学校裁量の拡大を目論んでいる」
ということではないかと考えています。
高槻市教育委員会は、2学期制の実施に併せて、次のものを原則として学校裁量とするとしています。
○定期テストの回数
○補助簿・補助資料
○個人懇談
○家庭訪問
○学校行事の見直し
○週時程表(標準時数は確保する)
夏休みに行われるサマースクールや授業日・補充学習などは含まれていませんが、パブコメのページの「2学期制リーフレット(参考資料)」(シンポジウムで配られたものと同じ)の4ページ目を見ると、試行実施校(モデル校)によってバラつきがある。それすなわち、学校の裁量に任されるということでしょう。
2学期制について、保護者が何に一番不安を覚えるか。それは、通知表と定期テストの回数が減る、ということではないでしょうか。
ところが、「通知表に代わる」というようなニュアンスで語られている個人懇談のときに示される補助簿・補助資料も、学校裁量になるのです。補助簿・補助資料を作らないモデル校もありました。
定期考査・定期テストの回数も学校裁量に。中学校で定期テストは3学期制では計5回行われますが、モデル校の七中では、前期後期各2回の計4回に減ってしまいました。
つまり、通知表と定期テストの回数について、すべての学校が、保護者の不安に応えてくれるとは限らないのです。その他、様々な点において、学校間に格差が生じることは間違いないでしょう。
ならば、学校を自由に選べるようにして欲しい、良い教育環境の学校に子どもを行かせたい、と少なからずの保護者は考えると思いますが、そうした学校選択制は議論もされていません。
学校に裁量権を移すにしても、責任と成果による果実・業績給のようなものをセットにしなければ、どんどんと教師が楽な方向へと流れていきかねません。
現在のような試行期間であれば、モデル校は、発表で保護者の目に耐えうるように、成果を競って学校改革を進めるでしょうが、本格的に2学期制が全校で実施となり、裁量権という権限・権利のみを学校・教師に与えるだけの結果に終われば、堕落が多くの学校で見られるようになるのではないでしょうか。
ですので、学校を、本当に変えたいのであれば、2学期制よりも、以前このブログに書いたように、学校を「球団制」にすべきでしょう。
★「球団方式」にすれば、学校は劇的に変わる。
http://kitaoka.seesaa.net/article/19211291.html
その記事にかっしゃん@小学校教師さんからこのようなコメントをいただきました。
★(前略)私は「特色ある学校作り」そのものが不要だと思っています。極論を言えば、高槻の教育は特色があったじゃないですか!隣接の市町村とあまりにも違う!と批判され続けてきたことからも解るように、公教育に求められているのは「特色」ではなく、「普遍性」です。行き過ぎた性教育や左傾化した歴史教育、通知表や運動会に表れる悪平等を批判するのも、その「普遍性」から外れるからだと私は思います。(後略)★
私もかっしゃん先生の意見に賛成です。「特色ある学校作り」というのは、具体的にいったいどんな「特色」なのでしょうか?「特色ある学校作り」という言葉そのものに、私はまやかしを感じます。
2学期制の試行について以前「広報たかつき」にはこのように書かれていました。
★学校や地域の実態に応じた教育課程を弾力的に編成できることから、各学校で、特色ある学校づくりが一層推進されます。★
学校園裁量の拡大がされればどうなるか。日教組などの組合の先生が跋扈し、また悪平等・反日的歴史教育・ジェンダーフリー等の歪んだ教育がより巧妙に進められる可能性も、なくはないと思います。
かっしゃん先生のおっしゃるとおり、危うい「特色」よりも、まずは学校教育に「普遍性」を確保することが、高槻市の公教育には求められているのではないでしょうか。
裁量権を学校に一旦渡してしまうと、取り戻すのは容易ではないと思います。制度などを元に戻すには、また2学期制と同じような議論・試行期間等で数年を要するのではないでしょうか。
2学期制と同時に裁量権を得た中学校が、定期テストを前期後期各1回の計2回にしたとしましょう。それについて、保護者から教育委員会に対して苦情が殺到し、教育委員会が改善を学校に指導しても、後の祭り。「定期テストの回数は、学校の裁量です」と言われればそれでおしまいです。
そうなると保護者の矛先は校長により強く向けられるでしょう。校長は保護者と教職員組合の間で板挟みとなり、広島県であったように、校長が自殺、なんてことも起こるかもしれません。
また、「第2回二学期制推進委員会の傍聴」の記事には熊さんから次のようなコメントをいただきました。
★埼玉県越生町では来年度から二学期制を導入すると教育長が突然いいだしました。
(中略)
そこで二学期制を導入した筑波大学附属高校の先生に2006.9.5お話をうかがいました。
通知票は2回、6月中旬に中間テストがあり終わったら目前に夏休みがあります。期末テストは遙か先の9月です。目前に夏休みがあるので、授業には実が入らず、授業そのものがだらだらとなりけじめがつかず、結局平成6年から始めた二学期制は去年廃止し、3学期制に戻しました。(後略)★
これはまさに今モデル校の第七中学校で行われている定期テストのスケジュールと同じです。テストが終わって休みが近いとなれば、子どもがだらけるのは自明の理。「2学期制にするなら、こうしろ!」にも書きましたが、休みの直前に定期テストを入れるべきなのです。そうしないのは、教師の不明・怠慢としか思えません。
2学期制を実施した自治体のうち、成功例のみを教育委員会は示すかもしれませんが、上記の筑波大学附属高校のような失敗例もあるのです。
以上のとおり、2学期制を実施する合理的な理由が、私にはまるで見出せません。むしろ、高槻市における2学期制の実施は、「学校裁量の拡大」という毒を腹に潜めた「トロイの木馬」のように思えます。2学期制は、少なくとも「凍結」すべきです。もう一度、市民で大いに議論し、総意を量るべきです。
パブリックコメントに意見を投書される方には、是非私がこれまで推進委員会やシンポジウムを聴いて書いた記事を読んでいただきたいと思います。
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