2007年01月26日

家族介護に関連する2つの事件

「枕の天使」アシュリーちゃんの事件【産経新聞】障害少女の成長抑制に米で論争 肉体改造と批判

最近、家族介護に関連する2つの事件がありました。

一つ目はアメリカでの事件。疾病などのリスクを避け、家族の介護の負担を減らすため、障害のある少女の成長を抑制する手術を行ったというもの。

【産経新聞】障害少女の成長抑制に米で論争 肉体改造と批判

 【ニューヨーク=長戸雅子】米ワシントン州シアトルの病院で、重度の障害を持つ少女に成長を抑制する手術が行われていたことが明らかになり、全米で是非をめぐる論争が起きている。小柄な少女の体にとどめることで成長に伴う疾病などのリスクが避けられ、介護者の負担も減ることから両親が希望したという。障害者の人権団体などは「介護者の都合に合わせた肉体改造」と批判しているが、回復の見込みのない障害児にとって望ましい将来とは、誰が決め、どんなものなのかという重い問いが投げかけられている。

 少女は現在9歳でアシュリーと呼ばれている。原因不明の脳障害と診断され、座ることや寝返りも自力でできず、生後3カ月時点の精神状態にとどまっているという。

 2004年7月に行われた手術では子宮と胸部の組織が切除された。さらに小柄な体格にとどめておくため、成長を抑制するためのホルモン治療を直後から始め、最近終了した。

 手術は当初公開されていなかったが、担当の医師団が昨秋、小児科系の専門医学誌に事例を紹介。アシュリーちゃんの両親も、手術を決断した理由やその後の経過をつづったブログ「アシュリーの治療」を今月から始めたことで一般に知られるようになった。

 アシュリーちゃんは現在、身長137センチ体重30キロで、ほぼ寝たきりの状態。彼女を「枕の天使」と呼ぶ両親は、ブログで手術を決断した理由について、床ずれや月経に伴う不快感、家系的に罹患(りかん)者が多い乳がん発症のリスクから免れられ、さらに介護者の負担も緩和されると説明、理解を求めている。

 手術の是非の判断にかかわったシアトル在住の小児科の生命倫理学者もCNNに「慎重に考慮した結果、(手術による)将来的な利益のほうがリスクより勝ると判断した」と選択は妥当だったと主張している。 

 しかし、障害者の人権擁護団体は「障害者は子供のような存在だという考えを広めることになる」と非難。自身も脳損傷の10歳の息子を持つ女性は、米メディアに「与えられている可能性を彼は手にする権利がある」と、成長抑制手術への強い疑問を述べた。

 このほか倫理学者からも「介護を楽にするための手術は非倫理的で容認できない」などの批判が出ている。

 これに対し、少数だが両親の決断に理解を示す意見もある。ニューメキシコ州のアルバカーキ・トリビューン紙は、「障害を持った子供のいない人が判断してはいけない」とのタイトルのコラムで、障害児を引き取って育てている女性の「苦労を知らない人に批評されたくない」という言葉を紹介している。★


アメリカのみならず、日本でも、このニュースに関していろいろな意見が出ています。

私は老人ホームで介護の仕事をしていますが、利用者の方の体重に悩まされることもしばしばで、時々腰を痛めています

体重というのは、介護する側にとっては大きな問題の一つで、場合によっては多くの人手がかかるのですが、体重が重いからといって要介護度が上がるわけではありません。要介護度が上がれば、その分支援も受けやすくなるのですが。

この「枕の天使」アシュリーちゃんの件は、非常に難しい問題です。疾病のリスクについても考慮に入れての決断であったので、単に介護の問題だけではないのですが、私は、介護する側が健康でなければ、結局介護される側も困ることになるので、ご両親の決断は、やむをえなかったかなと思います。


もう一つの事件は、日本で起こった次のものです。

【asahi.com】「介護放棄」で61歳女性が衰弱死 夫ら3人を書類送検

 重度のリウマチを患って自宅で寝たきりの女性(当時61)を介護せずに放置し、昨年9月に衰弱死させたとして、大阪府警は22日、大阪市城東区の食品会社経営の夫(64)と同居する会社員の長男(38)、近くに住む食品会社事務員の長女(40)の3人を保護責任者遺棄致死の疑いで書類送検した。女性は死亡時、極度にやせ、床ずれで上半身の骨の一部が露出していたという。府警は夫らが十分な食事を与えず、治療を受けさせなかった結果、女性が死亡したと判断した。介護をめぐり、同居家族らの刑事責任が問われるのは異例だ。

 捜査1課と城東署の調べでは、夫ら3人は、寝たきり状態だった女性を05年夏以降、十分に介護せず自宅3階の自室に放置し、昨年9月に死亡させた疑い。3人は「病院に連れて行けばよかった」などと、容疑を大筋で認めているという。

 女性は昨年8月7日に自室のベッドから転落しているのを家族が見つけ、救急搬送された。女性は救急隊員に「家族に捨てられた」と訴え、9月14日に死亡。体重が約35キロまで減り、床ずれで肩や背中の骨の一部が露出していた。死因は栄養失調による衰弱死だった。病院が警察に通報した。

 女性は04年ごろから寝たきり状態になった。05年夏にリウマチの症状が悪化して以降、女性は着替えや排泄(はいせつ)物の処理をほとんどしてもらえず、不衛生な環境下にあったという。コンビニエンスストアの弁当などを買い与えられていたが、痛みなどで体を動かせず十分に食べることができなかったとみられる。

 府警は当初、夫らによる介護放棄の状態が悪質として、未必の故意による殺人容疑の適用も検討。しかし、大阪地検と協議した結果、女性が治療を嫌がっていたほか、病状に適した食事でないにせよ与えていたことなどから見送った。

 自宅兼工場は鉄筋3階建てで、付近でひときわ目立つ。夫は22日、報道陣に対し「最低限の世話はしていた。介護施設に入れようとした矢先に亡くなった。こういう結果になるとわかっていたら、無理にでも病院に連れていくべきだった」と話した。★


産経新聞には、

【産経新聞】家族が介護せず死なす
(前略)女性は夫と長男との3人暮らしで、長女は近くに住んでいた。女性は3人と折り合いが悪く、長女は部屋に入る時には必ずゴム手袋やマスクを着用し、長男は「気分が悪くなる」と嫌がっていた。(後略)


と書かれています。

私の勤める老人ホームにも、以前大きな床ずれ(褥瘡)のある方が入居されたことがありますが、その臭いといったら、本当に形容のできないくらい酷いものでした。ウンコの臭いよりも、床ずれの臭いのほうが、何倍もきつい。同僚の看護師さんが懸命にガーゼを取り替えたりして褥瘡のケアにあたっていましたが、それに付き合っていると、その悪臭のせいで非常に辛かったです。ですので、この長女の気持ちがとてもよく分かります。

また、この女性は、重度のリウマチを患っていたとのこと。リウマチという病気も非常に厄介です。私の勤務先にもリウマチに罹っている利用者の方がおられますが、排泄の介助にあたっては、体がほとんど動かせず柔軟性もないので、職員二人がかりで、一人が体を支え、一人がウンコを拭く、というようにせざるをえません。

女性が治療を嫌がっていたそうですが、もっと早めに病院などに入っていれば、こんな事件にはならなかったでしょう。

しかし何より、この家族の場合、女性との折り合いが悪かった、つまり家族愛に欠けていたことが悲劇の原因でしょう。家族に愛情があれば、女性も素直に忠告を聞き入れて病院で治療を受けたかもしれないし、家庭でももっと良い介護を受けられたかもしれない。

家族にはそれぞれいろいろな事情があると思いますが、家族でいる以上、その絆というのは大事だなと、改めて思いました。

今年の4月1日から、夫婦が離婚をしたら、年金を分割しなければならないという「離婚時の年金分割制度」がスタートします。離婚予備軍は約4万組とか。

けれども、一人と一人が別々に暮らすのと、二人が協力し合って暮らすのとでは、トータルは同じ二人でも、その生活力・安心感には歴然とした差があると思います。年金をもらうような年齢になれば、医療や介護が必要になる「イザ」という時も、増えてくるはずです。

できるならば、家族仲良く、で、行きましょうよ。

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posted by 北岡隆浩 at 15:24| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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