
史跡地の「仮設広場」を、特定の団体だけが無料で独占的にスポーツ等で使用してきたこと、それを私が議会で追及したところ、高槻市教育委員会が「一般開放」した経緯については、2日前に書きました。具体的な場所は前日の記事に記載したとおりです。
今回は地裁判決について。
市教委は、特定の団体に対し、史跡地をスポーツ等に使用するのは、行政財産の目的外使用だということで、地方自治法238条の4第7項に基づく使用許可をしていました。このこと自体は適法であるものの、市民に広く報せず特定の団体にだけ許可し続けてきたことや、無料で許可してきたことは、問題だと思います。
私が議会で追及後は「一般開放」するとしました。「一般開放」ということは、公園のように誰でも自由に使えるということです。しかし、そうすると、別の法律的な問題が出てきます。公園等の類は、「公の施設」という扱いになり、地方自治法244条の2の規定に基づいて、市が条例で設置しなければならないことになっているのです。条例の制定等は議会の議決が必要ですが、市教委は「一般開放」すると特定の団体に告知しただけで、議会の承認は得ていません。条例で設置されていないので、「一般開放」というのは違法だというわけです。
市教委は、「仮設広場」に看板を掲げたというのですが、市民全員に知らされたわけではありません。ボール遊びができる公園が少ないのですから、野球でもサッカーでも無料でできる場所を知れば、そこを利用したいと思う市民の方もいるはず。市教委としては、これまでどおり特定の団体が無料で独占的に使用できるようにしようという思惑があったのではないのでしょうか。
ところが、大阪地方裁判所は、看板を見ている住民もいるし、「一般開放」は史跡地の啓発等に役立っているから行政財産の目的に沿うものだから条例で設置する必要はないとしました。看板を見た市民は限られているでしょうし、特定の団体が使用し続けている実態も無視した不当な判断だと私は思います。そもそも地方自治法に「公の財産」の規定がある以上、「仮設広場」を「一般開放」ということが、議会を通さずにできるのか疑問です。
とはいえ、市民の皆さんは、高槻市も裁判所もこの「一般開放」を適法としているわけですから、利用しても差し支えはないと思います。
なお、裁判所の判断としてはBの仮設広場は一般開放していないとしていますが、平成25年10月15日に市教委が特定の団体に対して交付した通知分にはBも含まれているので、一般開放していると考えられます。これについては市教委に確認してください。
以下は、判決中の「一般開放」に関する判断の部分です。
3 争点1(一般開放措置は違法か)について
(1) 普通地方公共団体は,地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理するものであり(地方自治法2条2項),地域における事務を広く処理する包括的な権能を有していると解されるところ,普通地方公共団体は,法令の定めに反しない限り,その権能に属する事務を自律的に処理することができるのであって,普通地方公共団体がその権能に属する事務をどのような方法によって処理するかは,法令の定めに反しない範囲で,当該普通地方公共団体の合理的な裁量に委ねられているということができる。
そして,行政財産とは,普通地方公共団体において公用又は公共用に供し,又は供することと決定した財産をいう(地方自治法238条4項。ここに財産とは,公有財産,すなわち,普通地方公共団体の所有に属する財産のうち,不動産,地上権,地役権,鉱業権その他これらに準ずる権利等をいう。同条1項及び3項)ところ,行政財産は,一定の場合を除くほか,これを貸し付け,交換し,売り払い,譲与し,出資の目的とし,若しくは信託し,又はこれに私権を設定することができず(同法238条の4第1項),その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる(同条7項)にとどまるため,私人が,公共用に供されている行政財産について,公共用物の一般使用(自由使用)として許される範囲を超え,排他的使用をするためには,当該行政財産を管理する権限を有する当該普通地方公共団体の長等(同法149条6号等)から,同法238条の4第7項の規定による行政財産の使用許可を受けることにより,特別の使用権原を付与される必要がある(公物使用権の特許)。
一方,行政財産について,排他的使用という程度に及ばない,公共用物の一般使用として許される範囲においてどのような使用を許すかについては,その使用に特別の権原を付与することが必ずしも必要であるとまではいえず,当該行政財産を管理する権限を有する当該普通地方公共団体の長等の合理的裁量に委ねられているということができ,公共用物の一般使用について当該地方公共団体の長等が定めた取扱いが違法となるのは,それが普通地方公共団体における当該財産を管理する権限を有する者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した場合に限られるというべきである。
(2)ア 上記認定事実(1)ウのとおり,一般開放措置は,本件各仮設広場の管理方法の一態様であって,史跡の維持管理及び普及啓発の観点から,使用目的を限定することなく,また,特別の使用許可を得ることなく仮設広場を利用することができるものとし,施錠する時間帯を定め,開錠された時間帯においては住民らの自由な立ち入りを可能なものとする管理方法であると認められる。
イ(ア)本件各仮設広場は,埋蔵文化財を包蔵する史跡保存地であり,史跡保存地として,地下に包蔵されている遺構や遺物を良好な状態で保存することがその目的とされる。そして,遺構や遺物を良好な状態で保存するに当たっては,地域住民がこれらの遺構や遺物の存在を認識し,適切な理解をすることが必要不可欠であるから,これらの遺構や遺物について,地域住民らに対して普及啓発を図ることもまた必要かつ重要ということができる。とりわけ,本件各仮設広場が所在する史跡鴫上郡衝跡附寺跡及び史跡安満遺跡は,いずれも本件各仮設広場の周囲に及ぶ広大なものであって,未だ公有化の途上にあり,本件各仮設広場の周囲にも埋蔵文化財包蔵地が広がっており,これらについてもなお公有化を進める必要があり,将来的な公園整備が期待される状況にあること(上記認定事実(1)ア,イ)に照らせば,多くの住民が本件各仮設広場の内外に広がる史跡嶋上郡筒跡附寺跡及び史跡安満遺跡の空間的な広がりや,周辺の文化財との関連性等について認識し,関心を抱き,あるいは考察を深める機会を確保することは当該埋蔵文化財の普及啓発の観点から重要であり,このような地域住民の適切な認識や関心が,埋蔵文化財の適切な管理や今後の埋蔵文化財包蔵地の公有化にも繋がるものということができる。
(イ)そして,史跡嶋上郡衙跡附寺跡及び史跡安満遺跡の空間的な広がりや,周辺の文化財との関連性等について認識し,関心を抱くなどするには,これらの遺跡が存在する場所に実際に足を運ぶことが有用な手段の一つと解されるところ,許可等の特段の手続を経ることなく住民らが気軽に本件各仮設広場を利用できるようにすることは,年齢や性別を問わず,幅広く住民にこれらの遺跡への接点を確保するものとして,有用ということができる。
この点は,本件各仮設広場について一般開放措置が採用される以前においては,本件各仮設広場における埋蔵文化財の普及啓発については,使用許可申請に対する許可書と併せてチラシの配布を依頼するといった方法等が採られ,本件各仮設広場において設置されていた遺跡(埋蔵文化財)の説明看板等もA2版,2色刷のものであったというのであるから(上記認定事実(3)),これを目にする者は限られ,遺跡の普及啓発を図るという観点からは限定的なものであったといわざるを得ないものの,一般開放措置の採用後には,本件各仮設広場に設置された説明看板等がより大きなものに改められ,現に本件各仮設広場に設置されたこれらの看板を注視する住民の存在も確認されている(上記認定事実(3)及び(4))など,本件各仮設広場の利用者等の住民らが史跡鴫上郡衙跡附寺跡及び史跡安満遺跡や,埋蔵文化財包蔵地であることを知り,又は改めて認識するきっかけとしての役割を果たしているものということができる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)の一方で,本件各仮設広場について一般開放措置を採用したことにより,本件各仮設広場における埋蔵文化財の保存に支障が生ずる旨の主張はなく,また,これをうかがわせる証拠もない。
ウ 上記イによれば,本件各仮設広場について一般開放措置という管理方法を採用したことは,史跡保存地として埋蔵文化財の適切な保存等といった本件各仮設広場の行政目的に沿うものといえ,一般開放措置を採用したことによって格別の支障もみられないことに照らせば,本件各仮設広場について一般開放措置を採用したことが,普通地方公共団体における当該財産の管理のあり方として,普通地方公共団体における当該財産を管理する権限を有する者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとは認めることはできないというべきである。(なお,本件仮設広場Bは一般開放措置が採られていない(上記認定事実(2)ウ)。)
これに対し,原告らは,行政財産である本件各仮設広場の行政目的は埋蔵文化財を良好な状態で保有し,維持管理することであるとし,一般市民が本件各仮設広場を利用することはその目的の範囲外の事象であるとして,このような利用を許容することとなる一般開放措置が許されるためには,目的外使用許可の手続,貸付け又は「公の施設」としての条例の制定といった手続が必要であり,これらの手続を経ていない以上一般開放措置は違法であると主張する。
しかし,上記(2)のとおり,遺構や遺物を良好な状態で保存するに当たっては,地域住民がこれらの遺構や遺物の存在を認識し,適切な理解をすることが必要不可欠ということができ,このような適切な認識や理解を酒養する一つの方法として,一般開放措置の有用性を認めることができ,他方,これによる弊害もうかがわれない以上,一般市民が本件各仮設広場を利用すること(一般開放措置)が本件各仮設広場の行政財産としての目的に含まれない目的外使用であると解することはできない。また,上記(2)のとおり,一般開放措置は特定の者に本件各仮設広場の独占的利用を認めるものではなく,開錠された時間帯における住民らの自由な立ち入りを是認する管理方法にすぎないのであって,独占的利用等をする場合に別途目的外使用許可等の手続を要することとは次元を異にするものといわざるを得ない。
加えて,上記認定事実(1)イのとおり,本件各仮設広場は,グラウンド状のものであるが,公有化された時点において既に土盛りがされるなどしていた上,高槻市においてグラウンドとしての整備等をしているものでもない(上記認定事実(2)ア,エ,弁論の全趣旨)。そうすると,本件各仮設広場をもって,高槻市が設ける施設ということはできないから,「公の施設」に当たるともいえない。
したがって,原告らの主張は採用することができない。
以上によれば,本件各仮設広場について採用された一般開放措置が違法とは認められない。
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